初心者のための株式投資ガイド|名古屋市立大学 坂和秀晃先生に学ぶ成功の秘訣

初心者のための株式投資ガイド|名古屋市立大学 坂和秀晃先生に学ぶ成功の秘訣

名古屋市立大学
坂和秀晃先生


東京大学経済学部卒業、大阪大学経済学研究科で博士(経済学)取得。2017年から1年間フルブライト研究員プログラムを活用して、コロンビア大学ビジネススクールに留学した。金融庁金融経済研究センター特別研究員などを経験。2021年からは、ファイナンス分野のアジア太平洋地域の国際学会のAsian Finance Association 理事(Board of Directors)を務める。現在、名古屋市立大学大学院経済学研究科准教授として、コーポレート・ガバナンス分野を中心とした研究・教育に従事している。


1.株式投資の基本的な心構えは?

株式投資に関心を持った理由は、人により様々でしょう。少子化が進んでいるので、将来の「年金支給」が十分にもらえないかもしれないという将来への不安や銀行の預金金利がゼロに近いので、ただ「預金」を銀行に預けるなら「投資」の方が儲かるのではといった理由からなど、様々な理由があるかと思います。

これから投資を始めようという人にとっては、株式投資は、「利益を得る(投資額を増やす)」ためのもので、「損失」をするということを余り考えていない可能性があります。

しかしながら、「長期」的に値上がりすると予想して投資した銘柄が購入時の株価より値下がりすることもあります。このような際にパニックになら無いためにも、投資した銘柄が、値下がりしたらすぐに売って「損切り」をするのか?

あるいは「長期目線」では「値上がり」するかもしれないと考え、保有を続けるのか?といったことを最初に考えておくことが重要かと思います。


2.初心者が最初に学ぶべき知識は?

株式投資を学ぶ上で、最低限知っておくべき知識としては、東洋経済新報社の「会社四季報」の各銘柄の情報を分かるようになることが重要だと考えています。

投資先を考える際に、投資家は、「株価上昇」による還元か、企業の利益の一部を株主に還元する「配当」による還元の2点に注目しております。それらの情報は、「会社四季報」に記されています。

「会社四季報」では、各銘柄についての業績を示す「純利益」、「ROE」、「一株当り利益」といった指標を投資に関心のある会社毎に取得することができます。

これらの指標から、競合他社と比べた時、十分に利益を上げている企業かどうかを知ることができます。また、企業の経営者が予想する「予想配当利回り」といった指標から、その銘柄を買った時に、何%程度の配当がもらえるか?といった点についても知ることができます。


3.投資初心者によくあるミスは?

初心者が投資を始める際に陥りやすい誤解としては、「投資」を始めれば簡単に儲かるという誤解が多いと思います。特にそのような考えで始めた人は、「損失」が出たときに、すぐに投資が嫌になるという傾向があるように思います。

実際の株式市場では、毎日の株価は変動しています。ある企業の株価の推移を見たときに、ずっと株価が上がり続ける企業というのは存在していません。

「株価」は、「買い」取引の方が「売り」取引より多い時に上がります。したがって、下がった時には、「売り」注文の方が多い訳で、多くの場合、その理由があります。

重要なのは、「株価」の値下がりが、短期的な理由なのか、あるいは長期的な理由なのかを見極めることかと思います。長期的な理由で下がっている場合は、下がり続ける可能性が高いので、「損切り」をして、売るといったことが、大きな損失をしないために大切な点になると思います。

4.株式投資で成功するための戦略は?

株式投資で「確実」に成功する戦略は、残念ながら、発見されていません。しかしながら、少なくとも「投資による損失」のリスクを小さくする方法などについては、「ファイナンス」という分野での研究が進んでいます。

1990年に、ノーベル経済学賞を受賞した故Markovitz 教授は、ある程度以上数の銘柄に資金を分散投資することで、投資による損失のリスクを小さくすることができることを示しました。

例えば、Covid-19のようなパンデミックによるリスクが起こった2020年度などでは、旅行業界などは、株価が大きく下がりましたが、Zoomのような通信業界の株価は、大きく上がりました。

このように、パンデミックのリスクに対して、株価が下がる企業もあれば上がる企業もあります。したがって、旅行業界の企業のみに投資した場合、損失が大きいですが、旅行業界と通信業界の企業双方に分散投資した場合は、投資の損失のリスクを小さくできます。「損失」を回避したい場合、ある程度の分散投資をすることも重要になると考えられます。

5.市場情報のキャッチアップ方法は?

投資初心者が、株式市場の最新情報をキャッチする情報源としては、たとえば会社四季報オンライン版(https://shikiho.toyokeizai.net/)などがあります。

このツールを使えば、簡単に興味のある銘柄についての比較などもできます。書籍での会社四季報に比べて、最新の情報がアップされているという意味では、最新の株式動向を見るためには、非常に簡単に調べられると思います。

たとえば、会社四季報オンライン版を簡単に使用する方法としては、「スクリーニング」機能があります。

「純利益率が高い銘柄」とか「配当利回りが高い銘柄」とかを抽出することで、上場企業4000社弱を簡単に比較することが可能です。まずは、興味のある「スクリーニング」機能を使ってみることなどでも、最新の市場動向を比較的簡単にキャッチできると思います。